公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY

事例で防ぐ子どもの傷害 Injury Alert(傷害速報)

No.105:類似事例:チャイルドシート肩ベルト未装着時の交通外傷による頸髄損傷(No.105 チャイルドシー ト使用中の交通外傷による頸髄損傷の類似事例 2)○同

タイトルチャイルドシート肩ベルト未装着時の交通外傷による頸髄損傷(No.105 チャイルドシー
ト使用中の交通外傷による頸髄損傷の類似事例 2)○同
事例_基本情報年齢:11 か月 性別:女児 体重 9.6 kg 身長:76.5 cm
事例_家族構成父、母、兄、本児
事例_発達・既往歴数歩の独歩が可能
傷害の種類
原因対象物
_対象名称
チャイルドシート(0~4 歳用、回転式)
原因対象物
_入手経路 使用状況
2019 年に兄に使用するため小児用雑貨専門店で購入し、本児に
対して毎日使用していた。事故当日は、チャイルドシートを前向
きに設置し、本児は腰ベルトのみを装着し、肩ベルトは嫌がるた
め外していた。
臨床診断名頸髄損傷
医療費入院 7,478,834 円 外来 未定
発生状況
_発生場所
母の運転する自動車内。一般道路上を走行中。
発生状況
_周囲の人・状況
本児は、母が運転する車の左後部座席(助手席の後部座席)に設
置されたチャイルドシート上に乗車していた。右後部座席(運転
席の後部座席)には、叔父(母の兄)がシートベルトなしで座っ
ており、同事故で左下肢前面の広範囲の開放創を負った。
発生状況
_発生時刻
2024 年 5 月 X 日 (火) 午後 1 時 40 分
発生状況
_発生時の詳しい様子と経緯
母が運転する車の左後部座席に前向きに設置されたチャイルド
シートに乗車していた。腰ベルトのみ装着し、肩ベルトは外し
ていた。車は時速 60 km で走行中、運転を誤り左前方からガー
ドレールに衝突し、回転して停車した。後続車の乗員が救急要
請した。受傷後、本児はチャイルドシート上で頸部を前屈させ
ている様子で傾眠傾向であった。母が本児を抱き抱えて車外に
救出した。車体前方およびフロントガラスに破損がみられ、エ
アバッグは運転席・助手席ともに作動していた。午後 1 時 55
分に救急隊が到着し、JCS (Japan Coma Scale) 0、瞳孔径 3
mm/3 mm、体温 35.8 ℃、心拍数 106 回/分、呼吸数 36 回/
分、SpO2 99%(大気下)であった。母の抱っこで頸椎保護はな
く搬送された。
治療経過と予後午後 2 時 28 分に医療機関に到着時、JCS 0、瞳孔径 2.5 mm/2.5
mm、心拍数 127 /分、血圧 91/51 mmHg、呼吸数 31 /分、SpO2
99%(室内気)であった。身体診察では、舌咬傷による少量の口
腔内出血、大腿部のシートベルト痕、両下肢の弛緩性麻痺を認め
た。外傷全身 CT (computed tomography) 検査では明らかな異
常はなく、脊椎/脊髄 MRI (magnetic resonance imaging) 検査
で脊髄損傷(C6-T1 レベル Frankel 分類 B)を認め、同日入院
した(図 1, 2)。入院 4 日目に嘔吐を契機として無気肺を発症し、
気管挿管の上、人工呼吸管理を開始した。入院 8 日目に抜管し、
非侵襲的陽圧換気での管理を試みたが呼吸状態が安定せず、入院
16 日目に気管切開を行い、人工呼吸管理を継続した。入院 22 日
目に一般病棟へ転棟し、入院 27 日目から経口摂取を開始した。
入院 52 日目に人工呼吸器を離脱でき、入院 86 日目に自宅退院
し、外来でリハビリを行っている。受傷後 57 日目の脊椎/脊髄
MRI 検査で C5-T2 レベルに頸髄萎縮を認めている(図 3)。受
傷後 3 ヶ月時点で下肢は弛緩し、自動運動はない状態である。経
口摂取は可能だが、呑気による腹部膨満が目立ち、胃管による脱
気や経管栄養も併用している。自排尿は認めるが、尿路合併症も
あり、間欠導尿を行っている。排便コントロールのため、浣腸・
脱気も定期的に行っている。本児の使用していたチャイルドシー
トは前向きで、肩ベルトが外れていた。添付文書には「生後 15
か月かつ身長 76 cm を超えるまでは必ず、座席を自動車の進行
方向に対して後ろ向きにして使用すること。ベルトのバックルは
確実に留めて使用すること。」と記載されている。本事例のシー
トの向きやハーネスの状態が、外傷の重症度と関連しているかど
うかは不明である。
キーワードチャイルドシート、肩ベルト、頸髄損傷