公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY

事例で防ぐ子どもの傷害 Injury Alert(傷害速報)

No.050:類似事例:保冷剤の誤飲(No.50 新しいタイプの洗剤(1 回分パックタイプ洗濯用液体洗剤)の誤飲に よる中毒の類似事例 10)

タイトル保冷剤の誤飲(No.50 新しいタイプの洗剤(1 回分パックタイプ洗濯用液体洗剤)の誤飲に
よる中毒の類似事例 10)
事例年齢:1 歳 5 か月 性別:男児 体重:12.4kg 身長:81.5cm
傷害の種類誤飲
原因対象物不凍タイプの保冷剤(15cm×20cm)発熱や外傷時の身体冷却用
内容物は水色透明のゼリー状、外装は中身が透けて見えるビニール製
自宅で何年も繰り返し使用していたもので、購入時期は不明
臨床診断名異物誤飲
医療費131,650 円
発生状況
_発生場所
自宅の居間
発生状況
_周囲の人・状況
両親・同胞 2 人(5 歳・2 か月)・患児の 5 人暮らし
本児は床でひとり遊びをしていた
母は 2 か月同胞の面倒をみており、本児から目が離れていた
発生状況
_発生時刻
2020 年 6 月 X 日(木) 午後 8 時 40 分
発生状況
_発生時の詳しい様子と経緯
上記時刻に、本児が保冷剤を咥えて内容物を吸っている様子に母が気
づいた。確認したところ、保冷剤の外装の一部が 7mm ほど破れて穴が
空いていた。母が保冷剤を取り上げ、指で本児の口腔内を掻き出したが
ほぼ嚥下しており、嘔吐反射を誘発しようとしたが嘔吐もしなかった。
インターネット上に、不凍タイプの保冷剤には有毒な物質が含有されて
いると記載されていたため、母が急病電話相談に相談した。指示された
通り、合計約 150mL の水と牛乳を飲ませた後、救急外来を受診した。
原因となった保冷剤は、同日夕方(詳細な時刻は不明)に 5 歳同胞の
頭部外傷を冷やす目的で使用したもので、使用後そのまま本児の手が届
くところに放置されていたと考えられた。 発見時は完全に常温化して
いた。外装がもともと破損していたか、本児が破ったかは明らかでない。
本児は在胎 39 週 4 日、頭位正常経膣分娩、出生体重 3,586g で出生。
健診では成長・発達は正常であった。今回の事例以前に異物誤飲の既往
はない。また、これまで本児や同胞が保冷剤で遊ぶようなことはなかっ
た。
治療経過と予後救急外来受診時、誤飲から約 3 時間経過しており、すでに胃洗浄の適
応はなかった。 バイタルサインおよび意識レベルの異常や消化器症状
は認めず、全身状態は良好であった。母が持参した保冷剤の内容物が極
端に減っている様子はなかったが、正確な誤飲量が不明であったため、
血液検査を施行した。 血漿浸透圧ギャップの開大はなく、エチレングリ
コールの中毒量を誤飲した可能性は低いと考えられたが、代謝物による
遅発性の臓器障害を考慮して、同日は入院の上、補液を行い絶食管理と
した。
X+1 日に施行した血液検査では、アニオンギャップ開大性代謝性アシ
ドーシスは認めなかった。この時点で製造会社への問い合わせにより、
同製品の成分は精製水・不凍液・ゲル化剤・防腐剤のみで、エチレング
リコールは含有されていないことが判明した。 ゲル化剤が不溶性高分
子吸水性ポリマーだった場合、便秘をきたす可能性が考えられたため、
食事を再開した後の便通・便性に問題がないことを確認してから退院を
検討する方針とした。X+1 日の昼から食事を再開し、嘔吐・下痢・腹痛
などの症状はなく、同日夕に普通便の排泄を確認できたため、X+2 日に
退院した。
製造会社によると、これまでに同製品の誤飲は数件報告されており、
いずれも下痢症状のみまたは無症状の事例という。理由は定かでない
が、本事例発生時点で当該製品は製造・販売中止となっている。
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