公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY

事例で防ぐ子どもの傷害 Injury Alert(傷害速報)

No.004,018:類似事例:浴槽でこども用浮輪を使用中に発生した溺水(No.4 浴槽用浮き輪による溺水、No.18 解 決したはずの浴槽用浮き輪による溺水(2009 年 3 月,10 月の 2 例)の類似事例 5)

タイトル浴槽でこども用浮輪を使用中に発生した溺水(No.4 浴槽用浮き輪による溺水、No.18 解
決したはずの浴槽用浮き輪による溺水(2009 年 3 月,10 月の 2 例)の類似事例 5)
事例_基本情報年齢:0 歳 11 か月 性別:男児 体重:9.1kg 身長:不明
事例_家族構成母(23)、母方祖母、曾祖母
母は軽度知的障害があり、出産の退院時に地域保健師に情報共有
が行われた。育児支援のために、母方祖母と同居している。
事例_発達・既往歴なし
傷害の種類
原因対象物
_対象名称
パンツ型こども用浮き輪
原因対象物
_入手経路 使用状況
祖母が母を養育していた際に、入浴時に浮輪を使用していたので、
母も入浴用として販売されている本製品(新品)を通信販売にて購
入した(図 1)。本児の定頸以降、毎日の入浴に使用していた。
臨床診断名溺水、誤嚥性肺炎、RS ウイルス気管支炎
医療費入院 713,100 円
発生状況
_発生場所
自宅浴室
発生状況
_周囲の人・状況
母と一緒に入浴しており、祖母は居間にいた。出産後は、母と祖母
が一緒に入浴をさせていたが、その後は母が一人で入浴させてい
た。
発生状況
_発生時刻
2022 年 8 月 X 日 (月) 午後 3 時 00 分
発生状況
_発生時の詳しい様子と経緯
発生当日は母が一人で本児を入浴させていた。浴槽には浮輪を装
着してつま先が付く程度の水位で湯を張っていた。母が着替えを
取りに行くため浴室を 1 分ほど離れ、戻ってみると浮輪が反転
し、本児は浴槽内に沈んでいた。抱き上げたところ開眼はするも
のの顔色が不良であり、反応も乏しかったため救急隊を要請し
た。医療機関へ搬送となった。
治療経過と予後医療機関到着時のバイタルサインは、SpO2 98%(室内気)、チアノ
ーゼを認めず、呼吸回数 36 回/分、心拍数 136 回/分、体温 37.7
度、意識は清明であった。診察時の胸部聴診上呼気性喘鳴と水泡
音を認めた。数日前より湿性咳嗽があり RSV 抗原陽性であった。
胸部 X 線検査で肺門周囲を中心に浸潤影を認めた(図 2)。病状が感
染によるものか溺水に起因するか不明であったことから小児一般
病床で入院経過観察とした。入院後 SpO2 93%と低下し、喘鳴が持
続したので酸素投与、β2 刺激薬吸入とメチルプレドニゾロンの静
脈投与を開始した。X+1 日以降も発熱が継続し、血液検査を再検
したところ CRP は入院時の CRP 0.37mg/dL から 5.46mg/dL ま
で上昇していた。誤嚥性肺炎を考慮してセフメタゾールを開始し
た。X+1 日におこなわれた胸部 CT 検査にて両肺野の浸潤影とス
リガラス様所見を認めた(図 3)。RS ウイルス感染による所見の可
能性も否定はできなかったが、溺水による誤嚥性肺炎、肺水腫の
可能性もあると判断した。抗生剤投与後には速やかに解熱し、7 日
間の投与で終了した。酸素投与と吸入療法は 9 日間、メチルプレ
ドニゾロンは 4 日間実施した。
自治体の保健センターに連絡して家庭環境の確認と家庭訪問を事
前に行ってもらった。また、母および祖母へ家庭内事故の危険性
について説明をし、X+13 日で退院とした。入院中明らかな神経学
的異常を認めず、神経学的後遺症はないと判断し外来経過観察と
した。外来通院中に本児の状態に変化は認められなかった。保健
師の家庭訪問が毎月実施されていることを確認できたので、受傷
から2か月で通院を終了とした。
キーワードパンツ型こども用浮き輪、溺水、誤嚥性肺炎