公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY

事例で防ぐ子どもの傷害 Injury Alert(傷害速報)

No.115 消毒剤誤飲によるエタノール中毒

タイトルNo. 115 消毒剤誤飲によるエタノール中毒
事例_基本情報年齢:5 歳 7 か月  性別:女児  体重:18 kg  身長:107 cm
事例_家族構成父,母,本児
事例_発達・既往歴特記すべき事項なし
傷害の種類
原因対象物
_対象名称
消毒用エタノール,速乾性手指消毒剤(プッシュ式,スプレータイプ),指定医薬部外品,
エタノール濃度 約 80vol%,クロルヘキシジングルコン酸塩 0.1w/v%
原因対象物
_入手経路 使用状況
入手経路:保育園が業者を通じて購入していた.
保育園での使用状況:新型コロナウイルス感染者が出る前までは,園児の手が届かないとこ
ろに置いて,保育士が園児の手にふりかけていた.しかし,新型コロナウイルス感染者が発
生してからは,教室内の園児が手の届く棚の上に置き,各自が消毒を行うようにしていた.
臨床診断名異物誤飲,エタノール中毒
医療費入院 47,755 円
発生状況
_発生場所
保育園の教室内
発生状況
_周囲の人・状況
本児は昼寝をせずに一人起きていた.他の園児から,本児が立って体を回転させていたとの
目撃情報があった
発生状況
_発生時刻
2022 年 3 月 X 日(月)  午後 3 時 00 分
発生状況
_発生時の詳しい様子と経緯
昼寝開始時間(午後 1 時)になっても,本児は寝ずに,速乾性手指消毒剤が置いてある棚の
近くで起きていた.昼寝終了時(午後 3 時),保育士は,本児が棚の下でうずくまっている
のに気づいた.本児は「目がグルグル回る,気持ち悪い」と訴え,呂律が回らず,体動困難
となった.保護者は保育園からの連絡をうけ本児を迎えに行った.
保護者に連れられて午後 4 時に医療機関 A を受診した際に,傾眠傾向で呼び掛けに反応し
なくなり,午後 4 時半に医療機関 B へ救急搬送となった.医療機関 B に到着時,体温 36.2 度,
血圧 104/64 mmHg,脈拍数 104 回/分,呼吸数 22 回/分,SpO2 99%(室内気)とバイタル
サインは正常であったが,意識障害(JCS III-300)がみられた.血糖 138 mg/dL.四肢強
直などけいれん様の動きはみられなかったが,間欠的に眼球上転を認めたため,てんかん発
作が疑われ,ジアゼパム 0.3 mg/kg を投与された.血液検査や頭部単純 CT では異常所見
を認めなかった.精査加療目的で医療機関 C へ救急搬送となった.
治療経過と予後医療機関 C に到着時(午後 6 時),JCS III-100,体温 36.8 度,心拍数 125 回/分,呼吸数 24
回/分,SpO2 98%(室内気)であった.血液検査(血球,一般生化学)と頭部単純 MRI 検
査では,異常所見を認めなかった.静脈血の血液ガスは pH 7.257,PCO2 51.1 mmHg,HCO3

22.0 mmol/L, BE-4.9 mmol/L, Lac 3.0 mmol/L,血糖 104 mg/dL であった.その後,本児
の意識レベルは徐々に自然回復し,午後 10 時には,会話が可能となった.X+1 日には意識
清明となり,ふらつきは改善し X+2 日に後遺症なく退院とした.
退院後,本児自ら話した内容では,昼寝時間にこっそり消毒剤を手に付けて舐めることを
10 回程度繰り返したところ,徐々に目が回り始めたとのことであった.これまでも何回か
同じように手についた速乾性手指消毒剤を舐めたことがあったと話した.また,舐めた理由
について家族が本児に聞いたところ,「美味しくなかったけど,気になっていたから舐め続
けた」とのことであった.
後日,X 日午後 11 時に測定した血中エタノール濃度が 120 mg/dL であったと判明した.以
上よりエタノール中毒と診断した.
キーワード速乾性手指消毒剤,異物誤飲,エタノール中毒