公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY

事例で防ぐ子どもの傷害 Injury Alert(傷害速報)

No.089 乗用車 3 列目シート(座席)における心肺停止

タイトルNo. 89 乗用車 3 列目シート(座席)における心肺停止
事例年齢:6 歳 7 か月  性別:女児  体重:20 kg  身長:120 cm
傷害の種類不明(窒息,縊頸,胸部打撲などを推察)
原因対象物乗用車(7 人乗り,3 列シート)
臨床診断名蘇生に成功した外傷性心停止,左血気胸,急性呼吸窮迫症候群(ARDS)
医療費約 650 万円
発生状況
_発生場所
駐車場(金融機関)
発生状況
_周囲の人・状況
母親が金融機関で用事を済ますまで,自家用車内の 2 列目に(チャイルドシート内の)2 歳
の同胞と待っていた.車内はエアコンをつけてあり,母親は,本児が車内から鍵をかけたこ
とを確認して車から離れた.その鍵は車内にあった.母親が車を離れた際,本児は覚醒して
おり,車内を自由に移動できる状態であった.なお同胞は経過中チャイルドシート内から外
に出ていない.また本児の発達に異常はなく,基礎疾患もない.
発生状況
_発生時刻
2019 年 6 月 X 日(木)  午後 4 時 00 分頃
発生状況
_発生時の詳しい様子と経緯
当時雨が降っていたこともあり,本児と同胞を車内(2 列目)に残し 20 分ほど母が離れて
いた.母が離れる際,3 列目は背もたれが完全に前方に倒れて座面と密着している状態で
あった.母が戻ると本児が 3 列目シートの背もたれと座面の間に身体が挟まれ,うつ伏せで
2 列目シートとの隙間に頭が垂れている状態であった(図 1).鍵が中にあって車内に入れな
かったため,助けを呼び,窓ガラスを割って助手席から入り母が本児と接触した.母親が接
触したとき,すでに心肺停止状態であったため,母親により心肺蘇生が開始された.
治療経過と予後覚知後 7 分で救急隊は現場に到着した.救急隊が接触した時は心静止であったが,その後無
脈性電気活動(PEA)に変化し,病院到着後,アドレナリンを投与する前に心拍は再開し
た(現場活動時間は 7 分間,現場出発後病院到着まで 8 分間).心肺停止状態に至ってから
心拍再開までの時間は,30~40 分と推察された.
左血気胸を認めたため胸腔ドレナージを施行し,人工呼吸管理としたが,両側の肺水腫,肺
挫傷により呼吸状態が悪化したため,高次医療機関に転院のうえ,体外式膜型人工肺
(ECMO)による管理を必要とした.なお,顔面は腫脹し暗赤色の鬱血が著明であったが,
頸部の索状痕などは認めなかった.4 日後に ECMO を離脱し,22 日後に気管切開術を施行
した.27 日後には一般病棟へ転棟した.その後在宅管理へ移行するため,自宅近くの医療
機関へ転院となった.転院時,自発呼吸は残存していたが,対光反射や角膜反射など,7 種
類の脳幹反射は全て消失していた.
救出時,本児を座席から出した際に強い力は必要なかったとのことであり,母もどうしてこ
のようなことになったのか分からないとのことであった.自家用車内でこのような事故が起
きたという事実は自動車会社と共有した.なお虐待を含む不適切な養育の可能性も関係機関
に確認の上検証したが,疑われるような報告などは存在しなかった.
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