公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY

事例で防ぐ子どもの傷害 Injury Alert(傷害速報)

No.040 ウイルス除去と称されている製品による中毒

タイトルNo. 40 ウイルス除去と称されている製品による中毒
事例年齢:1 歳 9 か月 性別:男
体重:14kg 身長:87cm
傷害の種類薬物誤飲
原因対象物ウイルス除去剤
臨床診断名メトヘモグロビン血症
医療費659,320 円
発生状況
_発生場所
自宅の台所
発生状況
_周囲の人・状況
母親が姉(3 歳)のトイレの世話をしようと台所から離れた数分間
発生状況
_発生時刻
2013 年 2 月 15 日 午後 4 時 30 分
発生状況
_発生時の詳しい様子と経緯
2 月 14 日に本児が発熱し,近医小児科でインフルエンザの診断を受けた.3 歳の姉などに
感染させないようにとウイルス除去剤(図 1)を初めて購入した.自宅の台所で,説明書
通りにボトル容器の蓋を開けて付属の顆粒を投入した.すぐに蓋を閉めずに待つように記載
されていたため,少し待とうとしていたところ,ちょうど 3 歳の姉がトイレで呼んだため
トイレに向かった.トイレから戻ると,本人が小さな椅子を台にして,台所の上に置いて
あったボトル容器を持って苦しそうな顔をしていた.ボトルの口には水滴がついており,
飲んだ可能性があった.しばらく様子を見ていると嘔吐が始まり,それが継続して顔色も
悪くなってきたので救急を要請した.
治療経過と予後救急隊が到着時,吐物から薬品の臭いがあり薬物誤飲が疑われた.顔色は不良で,呼吸数:
24 回/分,心拍数:150 回/分,体温:36.2℃,血圧や SpO2 は嫌がって測定できなかった.
病院到着時(17 時 54 分)にも顔色不良は継続し,リザーバーマスクによる酸素投与(10L)
にても SpO2 は 85 ~ 88% と低値であった.呼吸音は左右差なく,エア入りも良好であった.
末梢循環は温かく,毛細血管再充満時間は 2 秒未満,血圧は 132/59 であった.不穏が強
く,頻回の嘔吐と酸素投与に反応しない SpO2 低下から気管挿管され,人工呼吸管理のた
め PICU に入室となった.経鼻胃管からは黄色の液体が 20ml ほど吸引された.胸部エック
ス線写真では肺野に浸潤影を認めず,明らかな誤嚥性肺炎像は認められなかった.気管挿
管後の動脈血液ガス(19 時 30 分)にて,PaO2 537.0mmHg と高値にも関わらず,SpO2 は
95% 前後と解離が生じていた.摂取から 2 時間後にメトヘモグロビン(MetHb)が初めて
測定されており,8.0% と高値(正常値 1 ~ 2%,半減期 55 分)であった.その後は経時的
に低下していき,SpO2 との解離も消失した.第 2 病日には抜管して順調に回復し,2 月 21
日に後遺症を残すことなく退院した.
二酸化塩素液が経口摂取されると,体内で亜塩素酸を生じてメトヘモグロビン血症を引き
起こすことが報告されている.経口摂取から 2 時間経ってからの MetHb が初めての測定で
あり,当初の血中濃度は不明であるが,今回の MetHb の値の経過や SpO2 と PaO2 の解離
などから説明がつくと考えられる.
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