公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY

事例で防ぐ子どもの傷害 Injury Alert(傷害速報)

No.067:類似事例:医薬品(精神神経用剤)の誤飲による意識障害(No.67 医薬品の誤飲による中毒の類似事項 4)

タイトル医薬品(精神神経用剤)の誤飲による意識障害(No.67 医薬品の誤飲による中毒の類似事項 4)
事例年齢:1 歳 8 か月 性別:男児 体重:12.2kg 身長:81.3cm
傷害の種類薬物誤飲
原因対象物精神神経用剤(オランザピン錠 10mg)
臨床診断名急性薬物中毒
医療費入院費 41,652 円、外来費 1,590 円
発生状況
_発生場所
自宅の居間
発生状況
_周囲の人・状況
発生当日午前 8 時半頃、母親が外出。自宅には母方祖父母と父親、本
児、2 歳の姉が残った。母が不在の間、母方祖母や父親が本児を世話し
ていたが、自宅でどのように過ごしていたかの詳細は不明で、本児が
一人になる時間帯もあった。薬剤は PTP(press through pack)包装
であり、1 錠ずつに分けられ、蓋のない容器内に保管されていた。容器
は居間にある高さ 90cm の出窓に置かれていたが、普段から簡単に本
児の手が届く場所においてあったかなど詳細は不明であった。なお出
窓の近くにソファなどはなかった。
発生状況
_発生時刻
2018 年 3 月X日(土) 午後 1 時 30 分頃
発生状況
_発生時の詳しい様子と経緯
発生当日午前 11 時半頃、父親が本児を抱き上げた際に一時的に振戦様
の動きが見られたがすぐに消失したため経過観察していた。午後 1 時、
母親が帰宅した。午後 1 時 30 分頃、本児がソファから転落したことを、
2 歳同胞が母親に申告した。転落そのものを目撃した大人はいなかった。
本児は居間の床上に仰臥位で眠っている状態であった。本児の周囲に母
親の内服薬であるオランザピンの空包が 9 錠分散らばっていた。1 錠は
同室の床上で発見できたが、残り 8 錠は行方不明であった。午後 1 時 50
分より上肢振戦が継続し、医療機関 A まで救急搬送された。医療機関 A
では意識障害および振戦からけいれん重積発作と考えられ、医療機関 B
へ救急搬送となった。医療機関 A、医療機関 B へ到着した詳細時刻は不
明である。
治療経過と予後医療機関 B に搬入時、顔面紅潮、四肢振戦、GCS(Glasgow Coma
Scale)E3V3M4 の意識障害を認めた。バイタルサインは、体温 37.9
度、血圧 100/60mmHg、脈拍数 140/分、呼吸数 48/分、SpO2 98%(大
気下)であった。瞳孔は 2mm/2mm、対光反射は左右差なく迅速であっ
た。急性薬物中毒を鑑別診断の第一に挙げ、活性炭吸着療法を実施し
た。中枢神経感染症も考慮して血液検査、尿検査、髄液検査を含む各
種培養を採取し、初療の中で抗菌薬治療も開始した。意識障害が遷延
したため精査加療目的に一般病棟へ入院とした。入院時の血液検査、
尿検査、頭部 CT 検査、頭部 MRI 検査、薬物中毒検出用キット、髄液
検査では、明らかな異常所見を認めなかった。各種培養が陰性である
ことを確認し、入院 3 日目に抗菌薬を中止した。入院後より意識レベ
ルは徐々に改善し、入院 5 日目(薬物を誤飲したと思われる時刻から約
96 時間後)に意識清明となった。
誤飲の目撃者はおらず、2 歳の同胞が 9 錠分包剤を開封し、1 歳 8 か月
である本児が約 1cm 大の錠剤 8 錠を自発的に内服したと推測された。
一方で虐待も否定的できないことから、院内虐待委員会および児童相談
所にて審議を行なった上で、入院 13 日目に退院した。退院後、入院時
の血液・尿・髄液検体より高濃度のオランザピンが検出され、急性オラ
ンザピン中毒の確定診断となった。退院後、本児の成長発達の観察およ
び養育環境の支援のために外来管理とした。外来経過に特に問題なく、
2020 年 1 月に終診した。
キーワード