公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY

事例で防ぐ子どもの傷害 Injury Alert(傷害速報)

No.066:類似事例:ネオジム磁石入り玩具の誤飲による腸管穿孔(No.66 磁石と鉄球の誤飲による小腸穿孔の類 似事例 12)

タイトルネオジム磁石入り玩具の誤飲による腸管穿孔(No.66 磁石と鉄球の誤飲による小腸穿孔の類
似事例 12)
事例_基本情報年齢:11 歳 2 か月 性別:男児 体重:34kg 身長:149cm
事例_家族構成父、母、本児
事例_発達・既往歴精神発達遅滞あり、異食症(2021-)
傷害の種類
原因対象物
_対象名称
ネオジム磁石入りプラスチック玩具【図 1】
原因対象物
_入手経路 使用状況
2017 年に親が初めてネオジム磁石入り玩具を購入した。パーツ
が少なく遊び足りなかったので、2021 年から 2022 年に追加で
パーツを購入したが、正確な購入時期は覚えていない。
玩具は、本児部屋(2 階)に置いていた。具体的には、ケースに入
れたり、何か作品をつくってそのまま置いていたりして、本児の
手がとどくところに、いつでも遊べるように置いていた。使う頻
度は毎日のこともあれば、しばらく使わないこともあった。2017
年から X 日まで同様の頻度で遊んでいた。 遊ぶ時は一人のこと
が多かった。
臨床診断名ネオジム磁石入り玩具誤飲、腸管穿孔、腹膜炎
医療費入院 1,378,300 円
発生状況
_発生場所
自宅(詳細不明)
発生状況
_周囲の人・状況
もともと口の中にものを入れる癖はあったが、小学 4 年生の
2021 年頃にストレスからか、紙を食べたり、物を壊したり、窓
から物を投げたり、トイレに物を流すなどの行動が激しくなる時
期があった。この時期に、玩具(図 1)のネオジム磁石が外れ、
プラスチックに歯型のついたものが見られるようになった。ネオ
ジム磁石が徐々に数十個失われていたが、当初はそれらがトイレ
に流れてしまったと思われていた。同時期には、抜けた歯を飲み
込んだり紙を食べたりするなど、何でも口に入れてしまう状況だ
ったため、母はネオジム磁石の一部を誤って飲み込んだ可能性も
考えていたが、それが後のような傷害に繋がるとは予想していな
かった。
発生状況
_発生時刻
2023 年 2 月 X 日 (月) 午後 5 時 00 分
発生状況
_発生時の詳しい様子と経緯
2021 年の年末に嘔吐や腹痛があり医療機関Aを受診した。病院
では腹痛を訴えず熱もないため胃腸炎疑いとして経過観察となっ
た。同様のエピソードが数か月に 1 回あり、自家中毒の疑いとさ
れていた。腹部 X 線検査を施行されたことはない。
X-3 日前の昼頃から腹痛と嘔吐が出現し、それまでと同じように
医療機関 A で点滴加療を受けたが、その後も改善せず、連日医療
機関 A を受診し点滴加療を受けていた。X 日には発熱も認められ
た。施行された血液検査で炎症反応上昇あり、腹膜炎疑いで医療
機関 B に紹介受診となった。
治療経過と予後医療機関 B の救急室へ母に支えられながら徒歩で入室した。
入室時、体温 38.0 度、心拍数 121/分、呼吸数 26/分、血圧
116/74mmHg とバイタルサインは落ち着いていた。末梢冷感はな
く、毛細血管再充満時間も 2 秒未満でショックの徴候はみられな
かった。腹部所見としては腹膜刺激症状あり、右下腹部を中心に
腹部全体に圧痛、反跳痛が認められた。虫垂炎疑いで腹部造影C
Tと腹部レントゲン画像を撮像したところ、右下腹部、小腸内腔
に異物を認めた(図 2)。また腹腔内に少量の free air と腹水貯留
を認め、異物誤飲による腸管穿孔と腹膜炎が疑われ、緊急手術の
方針となった。術中所見(図 3)では異物の塊がある腸管と別の腸
管はネオジム磁石を通じて 2 か所に穿通あり、腸管同士は癒合し
ていた。穿通しループになった腸管に他の腸管が嵌入し、一部強
く圧迫狭窄や色調不良がみられた。その他にも腸管同士や腸管と
腸間膜の一部が憩室様や索状になり境界不明瞭に癒着や癒合して
いるような所見を複数個所に認めた。腸管の穿通部や色調及び癒
着の関係で、トライツ靭帯から 202 ㎝の部分から回腸末端から 6
㎝の部分までの計 198 ㎝を切除することとなった。異物(図 4)
は 10×5mm 程度のネオジム磁石 20-30 個、直径 3mm 程度の金属
球体 5-10 個、ネジ 5-10 個が一塊になっていた。その周囲には、
砂鉄や食物残渣が絡んでおり、一部原型をとどめておらず、全て
を分離することは困難であった。ネジはいずれも鋭利なものでは
なかった。術後経過は良好でX+8 日目に退院し、以降外来フォロ
ー継続となった。術後、嘔吐のエピソードはみられていない。
キーワードネオジム磁石、腸穿孔、異食症