公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY

事例で防ぐ子どもの傷害 Injury Alert(傷害速報)

No.066:類似事例:強力磁性玩具の誤飲による胃十二指腸穿孔(No. 66 磁石と鉄球の誤飲による小腸穿孔の類 似事例 8)

タイトル強力磁性玩具の誤飲による胃十二指腸穿孔(No. 66 磁石と鉄球の誤飲による小腸穿孔の類
似事例 8)
事例_基本情報年齢:1 歳 6 か月 性別:男児 体重:9.4kg 身長:78cm
事例_家族構成父、母、兄(5 歳)、本児
事例_発達・既往歴特記事項なし
傷害の種類
原因対象物
_対象名称
多数の小球状のネオジム磁石からなるマグネットボール
原因対象物
_入手経路 使用状況
2019 年 9 月に当時 4 歳の兄のために、マグネットボール 5mm
512 個セットを通信販売サイトからインターネットにより購入し
た。購入当初、兄は毎日遊んでいたが、2020 年に入ってから遊ぶ
頻度は減った。本児が自力で移動できるようになってから、マグ
ネットボールはおもちゃ棚の最上部(約 1.5m)に置くようになっ
たが、母の見ている前でのみ、兄が本児とともにマグネットボー
ルで遊ぶことはあった。
臨床診断名異物誤飲、胃十二指腸穿孔
医療費外来 4,480 円(A 病院)+1,880 円(B 病院)
入院 1,066,600 円(B 病院)
発生状況
_発生場所
自宅
発生状況
_周囲の人・状況
家族 4 人とも自宅にいた。本児は母や兄とリビングで遊んでおり、
マグネットボールを含めた様々なおもちゃが床にあった。父は別
室で入眠していた。
発生状況
_発生時刻
2020 年 11 月 X 日 (日) 午前 10 時 00 分
発生状況
_発生時の詳しい様子と経緯
上記時刻頃、兄が他のおもちゃの電池を外して遊んでおり、本児
がその電池を手に取っていた。母がそれに気付いて電池を元に戻
そうと児から目を離した。その後振り返ると、本児が口の中にマ
グネットボールを 1-2 個含んでいた。母が駆け寄った時には児の
口腔内にマグネットボールは既に残っていなかった。母が嘔吐を
させようと刺激したが、マグネットボールは吐き出されなかっ
た。両親は自然排泄を期待し様子を見ていたが、同日午後 10 時
に 2 回嘔吐があり、食欲低下も認めた。X+1 日に一次医療機関を
受診したところ、午前 10 時頃の腹部 X 線写真で胃内と思われる
部分に輪状に連なった粒状の物体を 10 数個認めた。胃内異物と
診断され、A 病院を紹介受診した。
治療経過と予後A 病院受診時、体温 37.1℃、脈拍 125 回/分、呼吸数 32 回/分、
SpO2:98%(室内気)であった。活気はやや低下しているものの腹
部症状は認めなかった。前医の腹部 X 線写真からマグネットボー
ルは胃内にとどまっていると判断された。救急車では数時間以上
かかってしまうという地理的要因を鑑みられ、ヘリコプターによ
り高次医療機関である B 病院に搬送された。午後 0 時 30 分頃、B
病院に到着した。バイタルサインは変化なく、機嫌は良好で腹痛
を訴えてはいなかった。B 病院で撮影された腹部 X 線写真(図 1)
ではマグネットボールの位置に変化はなく、午後 2 時 30 分頃から
全身麻酔下に上部消化管内視鏡検査を施行した。胃内には、円状
の数珠のように連なる磁石の半周のみしか確認できず(図 2)、胃
部にあるマグネットボールを牽引すると、胃後壁自体が牽引され
隆起した。幽門以遠に排出されたマグネットボールが粘膜を介し
て連結していると考えられた。その後、透視下でマグネットカテ
ーテルを用いてもマグネットボールは 2 個しか摘出できなかっ
た。直後に撮影した腹部 CT 検査(図 3)で、胃内と空腸内にマグ
ネットボールが留まっていたため、緊急開腹手術を行う方針とし
た。午後 4 時 45 分頃から開始された開腹手術により、胃内から 6
個、十二指腸から 7 個のマグネットボールが回収された(計 15 個
のマグネットボールを全て摘出した)。胃噴門部背側と十二指腸水
平脚に瘻孔が形成されていたため、同部を縫合修復し、胃内にエ
アリークがないことを確認した上で手術を終了した。術後は集中
治療管理を行い、術後 1 日目で一般病棟へ転棟した。術後 3 日目
に胃管を抜去し、飲水を開始した。術後 4 日目よりプロトンポン
プ阻害薬を終了し、食事を開始した。経過良好であり、術後 7 日
目に退院した。
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