公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY

事例で防ぐ子どもの傷害 Injury Alert(傷害速報)

No.066:類似事例:強力磁性玩具の誤飲による小腸穿孔(No.66 磁石と鉄球の誤飲による小腸穿孔の類似事例 7)

タイトル強力磁性玩具の誤飲による小腸穿孔(No.66 磁石と鉄球の誤飲による小腸穿孔の類似事例 7)
事例_基本情報年齢:1 歳 7 か月 性別:女児 体重:10.5k 身長:85.0cm
事例_家族構成父、母、兄(3 歳)
事例_発達・既往歴腹部手術歴を含め特記事項なし
傷害の種類
原因対象物
_対象名称
マグネットボール サイズ:1 個 5mm
原因対象物
_入手経路 使用状況
インターネットで、3 歳の兄のおもちゃとして購入。購入時は 1000
個入りのものであった
新品/中古:不明
使用頻度:不明だが、普段遊ぶときは両親と一緒に使用して遊ん
でおり、兄だけで使用させたことはなかった。児は好奇心が強く
普段から兄の遊び道具を奪いにいくような様子は見受けられてい
た。磁石で遊ぶときもよく一緒に遊んで磁石を奪ったりしたこと
はこれまでにも複数回あった。
遊ぶ場:和室またはリビングルーム
磁石の保管場所:キッチン台の端で台の高さは 130cm、児から目の
届かない場所であり、施錠などなし
臨床診断名ネオジウム磁石誤飲、腸閉塞
医療費入院 894,760 円
発生状況
_発生場所
自宅
発生状況
_周囲の人・状況
腹痛発症時は母が近くにいたが、誤飲した時期・状況などは不明
発生状況
_発生時刻
2020 年 9 月 X 日 (木) 午前 10 時 50 分
発生状況
_発生時の詳しい様子と経緯
2020 年 8 月中旬、腹痛を訴えることがあったが自然回復し一過
性で特に問題視していなかった。
発生日の朝 6 時 50 分ごろに母と児が一緒に朝食を食べた。児は
2 口程しか食べなかった。(当時の兄の所在は不明)
朝食を摂取したのち午前 9 時ごろまでテレビを見て過ごし、その
後再度入眠した。
午前 11 時ごろから間欠的な啼泣が出現し、近医受診。レントゲ
ンで腹部正中に金属球と思われる異物が 5 個連なる形で認めら
れ、母に伝えるとマグネットボールを飲んだ疑いがあるとのこと
で、対応可能な医療機関へ救急車で搬送された。
経過中、嘔吐なし。
治療経過と予後午後 6 時ごろ医療機関に到着した。到着時、バイタルサインは心
拍数 141 回/分、呼吸数 30 回/分、SpO2:99%(室内気)と異常は認
めず意識清明であったが、間欠的啼泣は持続していた。腹部は平
坦、軟で打診痛や反跳痛は認めなかった。腹部 X 線写真(図 1)
にて透過性の低い数珠状に連鎖する球状の物体が認められた。CT
(図 2)では腹部正中に金属アーチファクトと思われる所見があ
り、磁石と矛盾しない所見を認めた。すべて 1 カ所にあり、左上
腹部で口側の腸管拡張が見られ腸閉塞が疑われたため、緊急手術
となった。
術式:腸閉塞解除術、空腸部分切除、癒着剥離
所見:横行結腸中央部-空腸回腸移行部でバンド形成があり
通過障害の原因となっていた。癒着を剥離した。
トライツ靭帯から 10cm 肛門側で径 5cm のループ形成あり
さらに検索進めると腹壁鉤に空腸が吸着してきたため
磁石を同定できた。
空腸-空腸腸間膜対側が磁石で穿通し瘻孔形成していた。
同部を切除し端端吻合を行った。
瘻孔の形成からは誤飲して時間が経過していると思われた。今回
のバンド形成・癒着など術中にみられた所見は、腹部手術の既往
がなく、全てマグネットと考えている。
術後 1 日集中治療室へ入院したが経過問題なく術後 2 日目に一般
病棟へ転棟した。その後も経過良好で、術後 5 日目で退院した。
退院後の経過も特に問題はない。
キーワードマグネットボール、腸閉塞、 小腸穿孔