公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY

事例で防ぐ子どもの傷害 Injury Alert(傷害速報)

No.149 半閉鎖空間での日焼け止めスプレー使用による化学性肺炎い⃝

タイトルNo. 149 半閉鎖空間での日焼け止めスプレー使用による化学性肺炎い⃝
事例_基本情報年齢:11 歳 9 か月  性別:女児  体重:33 kg  身長:147.9 cm
事例_家族構成父,母,兄,本児
事例_発達・既往歴特記事項なし
傷害の種類
原因対象物
_対象名称
UV スプレー 100 g SPF50 PA++++ 製品サイズ:幅 42 mm×奥行き 42 mm×高さ
176 mm
原因対象物
_入手経路 使用状況
不明
臨床診断名化学性肺炎
医療費入院 276,880 円 外来 8,260 円
発生状況
_発生場所
自室の子ども部屋
発生状況
_周囲の人・状況
自宅に兄はいたが,別の部屋にいたためスプレー吸入時の目撃者はいない.途中で帰宅した
父が苦しそうにしている本児を発見し救急要請.
発生状況
_発生時刻
2024 年 6 月 X 日(月)  午後 7 時 20 分
発生状況
_発生時の詳しい様子と経緯
X 日午後 7 時 0 分頃,自室のロフトベッド(天井に近い部分に寝床があり,ベッドの下のス
ペースに工作用のテーブルを置き両脇に本棚を設置)の下部分の工作スペースで液体のり
に,日焼け止めスプレーを噴霧して遊んでいた.10 分ほど遊び,リビングルームに移動し
たところ呼吸困難が出現した.顔面蒼白で苦しそうにしているところを父親に発見され,父
親が救急要請し,搬送された.父親によると部屋の換気はされておらず,室内には日焼け止
めの臭気が充満していた.
治療経過と予後スプレー吸入(曝露)から 1 時間後の医療機関到着時,呼吸困難は改善しておりバイタルサ
イン,血液検査,身体所見の異常はなかったが,胸部 X 線写真で中葉から下葉にかけてす
りガラス状陰影を認めた.曝露から 2 時間後,救急外来で経過観察中に呼吸困難が出現し下
肺野で呼吸音の減弱があり,SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)92%(room air)に低下して
いた.経過からスプレー吸入による化学性肺炎と考えた.酸素投与したところ呼吸困難と
SpO2 の改善が見られ酸素投与を中断した.曝露から 4 時間後,再度呼吸困難が出現し,SpO2
87%(room air)に低下したため鼻カヌラ酸素 2 L/分の持続的投与を開始し,救急科病棟
に入院した.曝露から 6 時間後に病棟で再び呼吸困難が出現し咳嗽も認めたため,去痰薬吸
入を施行し咳嗽練習と深呼吸指導をしたところ,20 分後に呼吸困難は改善した.以降 8 時
間ごとの去痰薬吸入を継続し,翌日(曝露から 19 時間後)には呼吸器リハビリテーション
も開始した.一方で,胸部 X 線写真では入院時と同様の所見を認めていた.徐々に症状は
改善し,曝露から 24 時間時点では体動時の呼吸困難のみまで改善した.曝露から 36 時間
後,酸素投与を中止し,48 時間後には体動時の呼吸困難も改善した.60 時間後に退院した.
曝露から 8 日後の外来において撮影した胸部 X 線写真では,すりガラス状陰影の改善を認
めた.その後も経過観察のため外来通院を継続しているが,曝露後 6 か月時点で無症状であ
り胸部 X 線写真で増悪を認めていない.
スプレーで遊んだ理由を本児に聞いたところ,液体のりに日焼け止めスプレーを噴霧すると
表面が固まり,透明なフィルムができることに気づき,自室の様々な物にスプレーを吹きつ
けていたとのことであった.半閉鎖空間での換気不十分な中で大量のスプレー成分への曝露
により肺炎が引き起こされたと考えたが,なかでも炭化水素(Liquefied Petroleum Gas 以
下 LPG,または水添ポリイソブテン),揮発性物質などが原因である可能性を考えた.ご家
族,本児には本製品は屋外などの風通しの良い場所で使用し,用途以外には使用しないこ
と,引火に気を付けることなどを注意喚起した.
キーワード半閉鎖空間,UV スプレー,化学性肺炎