公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY

事例で防ぐ子どもの傷害 Injury Alert(傷害速報)

No.137 ヒロへリアオイラガ終齢幼虫死骸の毒針毛による口腔内刺創

タイトルNo. 137 ヒロへリアオイラガ終齢幼虫死骸の毒針毛による口腔内刺創
事例_基本情報年齢:0 歳 10 か月   性別:女児   体重:10 kg
事例_家族構成父,母,本児
事例_発達・既往歴特になし
傷害の種類
原因対象物
_対象名称
ヒロヘリアオイラガの終齢幼虫の死骸
原因対象物
_入手経路 使用状況
消毒後の庭木
臨床診断名口腔内刺傷
医療費入院 327,660 円  外来 7,550 円
発生状況
_発生場所
保育園の園庭
発生状況
_周囲の人・状況
保育士
発生状況
_発生時刻
2022 年 7 月 X 日(月)  午前 10 時 50 分
発生状況
_発生時の詳しい様子と経緯
通っている保育園で,2 日前に本種の幼虫が毎年発生する樹木(オオバヤシャブシ,図 1)
を消毒した.そのときに落下したヒロへリアオイラガの終齢幼虫の死骸(図 2)を,7 月 X
日午前 10 時 50 分に,本児が口に入れた.泣き声に気付いた職員がすぐに吐き出させたが,
口周囲,口唇,歯肉,舌に無数の毒針(図 3)が残存していたたため,医療機関 A を受診
した.
治療経過と予後来院時,全身状態は良く,口腔内と口周囲以外の皮膚に局所的に針の刺入はあるものの,明
らかな皮膚炎はなかった.持参した死骸から幼虫がヒロヘリアオイラガの終齢幼虫であり,
刺入しているのはその毒針毛であることが分かった.口周囲の毒針毛を粘着テープで可能な
限り除去し,哺乳ができることを確認し,その日は帰宅.翌日再診時,毒針毛による口腔違
和感が強く,哺乳不良を認めた.また,授乳時に本児の口が触れることによる乳房への毒針
毛の付着・刺激も強く,できる限りの除去が必要と考えたが覚醒下の処置は困難と判断し
た.全身麻酔下で挿管し,歯科医により毛抜きと洗浄により毒針毛の除去を行った(図 4).
全ての除去はできなかったが,処置後には経口摂取は改善傾向で,授乳もしやすくなったた
め,翌日退院となった.X+4 日後の再診時,残存していた口腔内の毒針毛は,ほぼすべて
自然脱落し,食事,哺乳ともに普段通りとなった.毒針毛が付着していた口腔周囲,母の乳
房については,紅斑や搔痒症状は乏しく,皮膚炎症状は強くなかった.
外来では,園に対し本種の駆除の際は乳幼児の安全確保に十分留意するよう指導.また,兵
庫医大皮膚科学教授夏秋優先生より以下をアドバイスいただき伝えた.
①本種の幼虫は 6~7 月,9~10 月に発生する(地域や年で変動あり).②毒針毛を持つ終齢
幼虫になる前の若齢幼虫のうちに消毒する.よって,6 月中旬と 8 月中旬までに 2 回消毒を
行うのが望ましい.③発生木の幹や周囲の石垣・塀に付着する繭も,慎重に除去すると良い
(強固に付着しており除去しにくいので注意する).
キーワードヒロヘリアオイラガ,刺虫症,口腔内刺創