公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY

事例で防ぐ子どもの傷害 Injury Alert(傷害速報)

No.134 トイレ消臭剤(LPG 含有スプレー缶)への引火による全身熱傷

タイトルNo. 134 トイレ消臭剤(LPG 含有スプレー缶)への引火による全身熱傷
事例_基本情報年齢:8 歳 7 か月  性別:男児  体重:27.9 kg  身長:126 cm
事例_家族構成父,姉,祖母,祖父,曾祖母
事例_発達・既往歴蕁麻疹が出現することがあるが明らかな誘因は不明であった.他は特記事項なし.
傷害の種類
原因対象物
_対象名称
スプレー缶タイプのトイレ消臭剤(LPG 含有)
マッチ棒(赤燐マッチ)
原因対象物
_入手経路 使用状況
スプレー缶タイプの消臭剤と赤燐マッチは普段からトイレに常備していた.赤燐マッチ(以
下,マッチ)は祖母が用意したものだった.本児にマッチの使用経験はなく,普段はマッチ
と消臭剤を併用することはなかった.
臨床診断名全身熱傷
医療費入院 611,920 円  外来 8,040 円
発生状況
_発生場所
自宅のトイレ
発生状況
_周囲の人・状況
発生時はトイレに本児のみがいた.トイレ内の換気状況は明らかでない.
発生状況
_発生時刻
2022 年 4 月 X 日(木)  午後 2 時 00 分ごろ
発生状況
_発生時の詳しい様子と経緯
自宅のトイレで本児が便臭を消そうと思い,スプレー缶タイプの消臭剤を噴霧した.消臭が
不十分だったのでマッチに火をつけたところ,引火し全身(顔面,前頸部,両手背,両大
腿)に熱傷を負った.直ちに近医皮膚科を受診し,顔面熱傷と嗄声を認めたため気道熱傷を
疑われ二次医療機関に救急搬送された.
治療経過と予後来院時のバイタルサインは心拍数 118 回/分,呼吸数 18 回/分,血圧 140/92 mmHg,SpO2
98%(room air),体温 37.4℃であった.細胞外液の補液を開始した.嗄声と顔面熱傷があ
り気道熱傷を疑い,気管挿管し緊急気管支鏡検査を行ったが,気道に明らかな熱傷は認めな
かった.顔面熱傷(図 1)を含む I~II 度の全身熱傷と診断した.熱傷範囲は,顔面(II 度
浅達性)7%,右手背・前腕背側(II 度浅達性)2%,右大腿前面(II 度浅達性)3%で,II
度合計 12% TBSA であった.嗄声は残存し,遅れて上気道閉塞が起こる可能性があったた
め,X 日に入院し,X+1 日まで集中治療室で呼吸循環状態の観察を行った.その後は一般
病棟で連日熱傷の処置を継続した.嗄声は自然に軽快し,上気道閉塞を疑う所見なく X+7
日に消失した.皮膚の上皮化は良好であり,X+14 日に退院した.退院後はヘパリン類似物
質ローションの塗布を行い,X+32 日に小児科外来にて熱傷部位の上皮化を確認した.
キーワードスプレー缶,LPG,熱傷,気道熱傷