公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY

事例で防ぐ子どもの傷害 Injury Alert(傷害速報)

No.119 電動門扉の挟まれ事故による外傷

タイトルNo. 119 電動門扉の挟まれ事故による外傷
事例_基本情報年齢:6 歳 9 か月  性別:男児  体重:24.9 kg  身長:123 cm
事例_家族構成父,母,姉(10 歳),弟(2 歳)
事例_発達・既往歴特記すべき既往歴なし
傷害の種類
原因対象物
_対象名称
電動門扉スライドタイプ.
祖父母が住むマンションの駐車場入口に設置されている門扉.
高さは約 1.5 m 金属製.
開閉ボタンのある電動門扉制御盤【図 1】が近くに設置されている.制御盤の高さは
およそ 100 cm で施錠されておらず,本児も含めた誰でも操作可能であった.
原因対象物
_入手経路 使用状況
祖父母宅に遊びに来た際,本児は開閉ボタンを操作したり作動している門扉の上に乗ったり
して,時折遊んでいた【図 2(a)(b)】.
臨床診断名外傷性窒息・外傷性肝損傷(外傷外科学会分類 Ib)
医療費入院 714,820 円  外来 197,000 円
発生状況
_発生場所
祖父母が住むマンションの駐車場入口.
発生状況
_周囲の人・状況
10 歳の姉と 2 人で近くの公園に遊びに行こうとしていた途中であった.
発生状況
_発生時刻
2022 年 1 月 X 日(金)  午後 4 時 35 分頃
発生状況
_発生時の詳しい様子と経緯
受傷日,本児は母親・姉とともに祖父母の家に遊びに来ていた.近所の公園に遊びに行くた
めに姉と本児の 2 人で外出した.姉は本児より先にすぐ近くの公園まで遊びに行っていた.
本児は一人で,開閉ボタンを操作したあと,実際に作動している門扉の上に乗って遊んでい
た【図 2(a)(b)】.
受傷時は門扉の「開放」ボタンを操作したあと,門扉内地面を移動し,控え柱をくぐろうし
たところ尻餅をつき,その後足側から門扉の横桟に巻き込まれた【図 2(c)(d)(e)】.門
扉は足側から頭側に向かって乗り上げていき,最終的に前胸部付近で止まった.止まったと
同時に,姉が本児の受傷を発見した.姉がすぐに「停止」ボタンを押したあと,通行人およ
びマンションのインターホンで家族に助けを求めた.かけつけた祖父と母親が門扉を持ち上
げ,姉が児を引きずり出した.
後日家族より防犯カメラの映像が提供され,本児は受傷から救出まで約 150 秒間挟まれてい
た状況が確認された.また,検知センサーは門扉に備わっているが,設置先の要望で,開放
方向では「検知センサー無効」,閉鎖方向「検知センサー有効・検出時門扉停止」となって
いた.今回は開放方向であり,検知センサーは作動していない.門扉の下面は,地面から
10 cm であった.本児の胸囲は 62 cm,胸の厚みは 13.5 cm(受傷 4 か月後)であった.
治療経過と予後救急車が要請され,医療機関に搬送された.到着時,心拍数 110 回/分,血圧 102/75 mmHg,
呼吸数 20 回/分,SpO2 100%(酸素 6 L/分,リザーバーマスク),GCS E4V5M6 とバイタ
ルサインは安定していた.上腹部と腋窩に一部皮下出血を含む擦過傷を認めた.また前頸部
にも皮下出血【図 3】を認め,眼瞼結膜には溢血点を複数認めており,受傷状況も踏まえ外
傷性窒息の解除後と考えられた.全身の単純および造影 CT 検査を施行したところ,肝左葉
および尾状葉に低吸収域を認め,外傷性肝損傷(外傷外科学会分類 Ib)と診断した【図 4】.
明らかな腹腔内液体貯留や Free air は認めなかった.他の実質臓器や頭蓋内にも明らかな
異常は認めなかった.血液検査では AST 4,906 U/L,ALT 5,447 U/L,LDH 4,277 U/L と
肝逸脱酵素の著明な上昇を認めた.以上より,外傷性肝損傷(Ib)および外傷性窒息の診断
で,同日入院した.状態は安定しており,第 8 病日に自宅退院となった.
キーワード電動門扉,窒息,外傷性肝損傷