公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY

事例で防ぐ子どもの傷害 Injury Alert(傷害速報)

No.034:類似事例:電子体温計による咽頭外傷(No.34 歯ブラシによる口腔内外傷の類似事例 12)○

タイトル電子体温計による咽頭外傷(No.34 歯ブラシによる口腔内外傷の類似事例 12)○
事例_基本情報年齢:1 歳 1 か月 性別:男児 体重:9.6 kg 身長:71 cm
事例_家族構成父、母、姉(3 歳)、姉(2 歳)、本児
事例_発達・既往歴つかまり立ち可、つたい歩き可、独歩不可
生後 11 か月に RSV 感染症で入院歴あり
傷害の種類
原因対象物
_対象名称
電子体温計
原因対象物
_入手経路 使用状況
電子体温計は、本児の手の届かないリビングの 3 段カートの最上
段に、普段は保管していた。事故当日は、母が体調不良のため、
寝室の枕元でカゴに入れて管理していた。
臨床診断名咽頭外傷、右口蓋扁桃周囲膿瘍、敗血症
医療費入院 1,117,380 円 外来 2,320 円
発生状況
_発生場所
自宅の寝室
発生状況
_周囲の人・状況
母、姉 2 人、本児が寝室で一緒に過ごしていた。
発生状況
_発生時刻
2024 年 10 月 X 日 (木) 午後 7 時 30 分
発生状況
_発生時の詳しい様子と経緯
本児は、姉 2 人と携帯電話で動画を見て遊んでいた。その際、
本児が電子体温計のケースを口に入れているところを、母が目
撃していた(電子体温計本体がどこにあるかは認識していなか
った)。母が 2 歳の姉の対応をしていたところ、本児が母の背中
でつかまり立ちをしようとして、急に泣きだした。振り返ると
本児が腹臥位で倒れており、母が本児の体を起こすと喉に電子
体温計が刺さっていたため、とっさに引き抜いた。電子体温計
には血液が付着していたが、破損はなかった。すぐに母が救急
車を要請した。
治療経過と予後医療機関 A に救急搬送され、咽頭外傷の部位は止血していたた
め CT(computed tomography)検査は行わず経過観察する方針と
なった。帰宅後に、不機嫌が出現した。X+1 日、保育園に登園し
たが 38℃の発熱があり帰宅し、夜にかけて活気不良が見られる
ようになった。X+2 日に活気不良が続いたため、医療機関 B を
受診した。血液検査で白血球 27,000 /µL、CRP 19 mg/dL と高
値、迅速検査(アデノウイルス、インフルエンザウイルス、SARSCoV-2、A 群溶連菌)は陰性であり、咽頭外傷後の感染と敗血症
の疑いで医療機関 C を紹介受診した。受診時は全身状態不良で
あり、バイタルサインは、呼吸数 30 回/分、SpO2 100 %、心拍
数 178 回/分、収縮期血圧 86 mmHg、意識レベルGCS (Glasgow
Coma Scale) 6 点 (E1V4M1)、体温 39.8 ℃だった。Phoenix
Sepsis Score は GCS 6 点(<10)と PT-INR 1.58(>1.3)と合
計2点であり、敗血症に伴う代償性ショックを想定し、細胞外液
の輸液と抗菌薬治療を開始した。病歴から深頸部膿瘍が疑われた
ため頸部造影 CT 検査を施行し、右口蓋扁桃周囲膿瘍と診断し
た。耳鼻咽喉科医による喉頭内視鏡検査の所見も併せて、気道緊
急や縦隔膿瘍への進展が危惧されたため、右口蓋扁桃摘出術を施
行し、緊急入院とした。術中の膿の培養検査からは Streptococcus
pyogenes が検出され、血液培養検査は陰性であった。抗菌薬治
療は静注 10 日間、内服 4 日間とした。術後経過良好であり、X+13
日目に退院した。術後約 1 か月で外来経過観察を終了とした。
キーワード電子体温計、咽頭外傷、口蓋扁桃周囲膿瘍