公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY

事例で防ぐ子どもの傷害 Injury Alert(傷害速報)

No.106 アロマディフューザーの液を誤嚥したことによる化学性肺炎

タイトルNo. 106 アロマディフューザーの液を誤嚥したことによる化学性肺炎
事例_基本情報年齢:1 歳 4 か月  性別:男児  体重:14 kg  身長:77 cm
事例_家族構成父 母 姉(3 歳)
事例_発達・既往歴特記すべき事項なし,独歩可能
傷害の種類
原因対象物
_対象名称
アロマディフューザー 50 mL(図 1)(香り:ROSE).販売元の資料では,成分の 55%がジ
プロピレングリコールメチルエーテルであった.
原因対象物
_入手経路 使用状況
トイレの中の洗面台に置いていた.洗面台は,高さ 74 cm,奥行き 18 cm,横 80 cm だっ
た.発生 2~3 週間前に母が購入した(図 2).
臨床診断名化学性肺炎
医療費入院  650,440 円
発生状況
_発生場所
自宅トイレの洗面台横
発生状況
_周囲の人・状況
トイレのドアは開き戸で,普段は閉めているが,発生時トイレのドアが開いていた.母は姉
をトイレ横の洗面所で着替えさせていた.発生時トイレ内には,姉のために用意していた高
さ 14.5 cm の踏み台があった.
発生状況
_発生時刻
2020 年 11 月 X 日(水)午前 8 時
発生状況
_発生時の詳しい様子と経緯
2020 年 11 月 X 日の午前 8 時ごろ,母が姉を洗面所で着替えさせているときに,トイレへ向
かう本児をみた.約 1 分後に姉の着替えが終わり,母が本児の様子をトイレに見に行ったと
ころ,本児は咳をしながら泣いていた.アロマディフューザーにさしてあった棒と容器が洗
面台のシンクに全て落ちており,残りの液体がほとんど無い状態であった.床やシンクには
液体はなかった.本児が吐きそうになっており,口からアロマの香りがしたため午前 8 時半
に医療機関 A を受診した.口からアロマの香りがあり顔色はやや不良であった.経過観察
を指示され帰宅となったが,帰宅後 2 回嘔吐を認め,その際も咳き込んでいた.同日午後に
同院を再診し,40 度の発熱がありアセトアミノフェン座薬を処方され帰宅した.X+1 日も
同院を再診し,炎症反応高値であり水分摂取不良であったことから医療機関Bを紹介された.
治療経過と予後医療機関 B を受診時,体温 39.3 度,心拍数 180 回/分,SpO2(室内気)95%,呼吸数 50 回/
分であった.意識清明で活気あり,軽度の咳と鼻汁がみられた.頻呼吸はみられたものの,
呼吸音に明らかな異常はなく努力呼吸もみられなかった.血液検査では WBC 18,740(好中
球 68%)/μL,CRP 21 mg/dL と炎症反応が上昇しており,胸部 X 線写真(図 3(a))では
両側下肺野に浸潤影がみられた.同日入院し,肺炎に対しスルバクタム/アンピシリン点滴
静注を開始した.しかし高熱は持続し,X+3 日の胸部 X 線写真で左肺野の透過性低下を認
め,肺炎増悪と判断し抗菌薬はセフォタキシムへ変更し,化学性肺炎を考慮しプレドニゾロ
ン静注 2 mg/kg/day を開始した.薬剤変更後すみやかに解熱したが,X+6 日の胸部 X 線
写真(図 3(b))で左下肺に空洞性病変を認めたため,胸部単純 CT を施行した.胸部単純
CT(図 4(a)(b))では,左肺下葉に長径 4 cm 大の蜂巣状の空洞を伴う病変がみられた.
周囲への炎症波及は軽度であったため同日よりプレドニゾロンを漸減し内服へ移行した.プ
レドニゾロンは数日毎に漸減し計 13 日使用した.X+13 日の胸部 X 線写真で増悪ないこ
と・血液検査で炎症反応改善したことを確認し自宅退院とした.経過中,高熱と頻呼吸はみ
られたものの,低酸素血症や努力呼吸は一貫してみられず,咳嗽も軽度で,吸引では少量の
痰のみ引ける状態であった.
退院後は外来にて定期的に診察および胸部 X 線写真を実施し,受傷 3 か月後の胸部 X 線写
真上(図 3(c))では,空洞病変の改善を認めた.また発症 6 か月後の胸部単純 CT(図 4
(c)(d))では,左肺底部に陳旧性炎症性変化と思われる索状影~小結節影が認められるも
のの,前回 CT で左肺下葉に認められた空洞性病変は消失していた.
キーワード芳香剤,誤嚥,化学性肺炎