公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY

事例で防ぐ子どもの傷害 Injury Alert(傷害速報)

No.105 チャイルドシート使用中の交通外傷による頸髄損傷

タイトルNo. 105 チャイルドシート使用中の交通外傷による頸髄損傷No. 105 チャイルドシート使用中の交通外傷による頸髄損傷
事例年齢:2 歳 6 か月  性別:男児  体重:15.8 kg  身長:95 cm
傷害の種類交通外傷,頸髄損傷
原因対象物幼児用チャイルドシート
臨床診断名頸髄損傷(C2,3 レベル),頸胸椎骨折(C7/Th1 椎間関節亜脱臼,Th1 椎体骨折,Th1 右
横突起骨折),下顎骨折
医療費18,862,810 円
発生状況
_発生場所
片道一車線の自動車道
発生状況
_周囲の人・状況
母の運転する軽自動車の右後部座席に設置されたチャイルドシートのハーネスベルトを装
着して乗車していたところ,同車が単独事故として道路右側の電柱へ正面衝突した.
発生状況
_発生時刻
2017 年 10 月 X 日(火)  午後 2 時 30 分頃
発生状況
_発生時の詳しい様子と経緯
母が運転する軽自動車に乗車していたところ,同車が単独事故として電柱へ正面衝突した
(図 1,2).児は,後部座席に設置されたチャイルドシートにハーネスベルトを装着して前
向きに座っていたが,救急隊接触時に CPA と認知され,BLS の実施により 5 分程度で自己
心拍再開した.本児の他にもう一人 11 か月の乳児が助手席側の後部座席に横向きに固定さ
れたチャイルドシートに寝ていたが,特記すべき外傷はなかった.
前医到着時は神経原性ショックの状態で,自発呼吸はなく,持続勃起を伴っていた.CT か
ら第 7 頸椎脱臼骨折,第 1 胸椎椎体骨折,下顎骨骨折と診断された.
治療経過と予後受傷から 2 日目に手術を含めた継続加療目的に人工呼吸器管理下で高次医療機関へ転院と
なった.来院時自発呼吸はなく,四肢は完全麻痺の状態で肛門は弛緩していた.MRI を含
む諸検査より頸髄損傷(C2,3 レベル,Frankel 分類 A),頸胸椎骨折(C7/Th1 椎間関節
亜脱臼,Th1 椎体骨折,Th1 右横突起骨折),下顎骨骨折,右腸骨骨折と診断した(図 3,
図 4).同日に頸胸椎後方固定術,受傷から 3 日目にハローベストを装着してリハビリを開
始,受傷から 7 日目に気管切開を行った.受傷から 22 日目には経口摂取を開始し,受傷か
ら 114 日目にスクリューを抜釘した.受傷から 188 日目にリハビリを目的とした転院となっ
た.退院時人工呼吸器離脱は困難であったが,経口摂取は可能で,右上肢にわずかに自動運
動が出現するようになり Frankel 分類 C と判断した.
チャイルドシートは体幹の支持には優れるが頭部の支持ができない.前方への加速度運動が
加わった際に,小児は椎間関節が扁平で靭帯の支持性が弱い,頭部が大きく頸部にかかる屈
曲伸展の際のトルク(物体を回転させる力)が大きいなどの解剖学的特徴があり,上位頸椎
頸髄の損傷が起こる可能性がある.チャイルドシートによる頸椎頸髄損傷予防に,シートの
向きや構造について検討する必要があると考えられた.
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