公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY

事例で防ぐ子どもの傷害 Injury Alert(傷害速報)

No.103 エスカレーターと壁に挟まれて受傷した体幹外傷_1

タイトルNo. 103 エスカレーターと壁に挟まれて受傷した体幹外傷_1
事例年齢:5 歳 11 か月 性別:男児 体重:19.9 kg 身長:115.4 cm
傷害の種類胸部圧迫
原因対象物エスカレーターと壁(壁とハンドレールの隙間は 15 cm)
臨床診断名窒息,左肘挫傷,下顎擦過傷
医療費266,020 円
発生状況
_発生場所
デパートの上りエスカレーター.固定式アクリル板と吊り下げ保護板は設置されていた(図
1)
発生状況
_周囲の人・状況
本児,両親,姉(9 歳),姉の友人(9 歳),姉の友人の母で会食中,本児と姉,姉の友人の
3 人で店外に出て遊んでいたところで発生した.本児の服装は半袖,半ズボンであった.発
生時,両親と姉の友人の母は店内にいた.
発生状況
_発生時刻
2020 年 5 月 X 日(土)午後 9 時 55 分
発生状況
_発生時の詳しい様子と経緯
本児,姉,姉の友人の 3 人でエスカレーター付近の広場で遊んでいた.本児がエスカレー
ター外側のアウターデッキ(図 1)に両足を乗せてハンドレールに両腕をかけたところ,ハ
ンドレールに引っ張られエスカレーターの外側を昇ってしまい,そのまま引き込まれる形で
壁とハンドレールの隙間(図 2,図 3)に体幹が挟まれた.姉,姉の友人が即座に両親に報
告し,挟まってから 1,2 分後に両親が現場に駆け付けた.その時点で,児はぐったりして
宙に浮いている状態であった.児の腹側がハンドレール側,背側が壁側であり,壁とハンド
レールの隙間に体幹が挟まれていた.左上肢は屈曲位で前胸部とハンドレールに挟まれてい
た.頸部は一部ハンドレールと接触しており,頭部と両下肢は宙に浮いている状態であっ
た.母が救急要請を行い,周囲の一般客が緊急停止ボタンを押し,父が児を引き上げて救出
した.児が挟まれてから救出されるまでは約 3 分であった.救出直後,児は顔色不良であり
口唇チアノーゼを認め,父親が抱きかかえながら刺激するも反応はなかった.約 30 秒後,
児は覚醒し大きな声で啼泣した.救急要請から 8 分後に救急隊が到着し,父同伴のもと,医
療機関へ搬送された.
治療経過と予後搬送時から意識は清明で,気道,呼吸,循環は保たれていた.病院到着時,バイタルサイン
は脈拍数 136/分,呼吸数 17/分,SpO2 98%(室内気)であった.左肘外側に圧痛,腫脹,
発赤を認め,左肘関節の可動域制限を認めた.左側胸部に発赤,下顎に擦過傷を認めた.両
肘関節 X 線検査,胸部~骨盤部の造影 CT 検査を施行した.CT では気胸や臓器損傷など緊
急の介入を要する所見は認められなかった.肘関節 X 線検査では明らかな骨傷は認められ
なかったが,救急外来で左肘関節のシーネ固定を施行した.胸部圧迫による窒息,左肘挫
傷,下顎擦過傷と診断し,経過観察目的に入院とした.入院後,呼吸,循環ともに安定して
おり意識も清明であった.入院 3 日目に左肘関節痛は改善し,シーネ固定解除の上で退院と
した.受傷 10 日後の時点では,普段と変わらない様子で後遺症なく経過している.
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